起業率も女性の役員比率も低い国日本

世界的に見て日本の起業率は低く途上国並

 OECDの統計によると、起業率の国別ランキングにおける日本の順位は39ヶ国中30位と低く、設立までにかかる手続き、日数もそれぞれ8段階、23日と比較的多い傾向にある。
 これら手続き数、日数を設立コストと捉えて各国の起業率ランクとの関係を見ると、いずれも有意に強いプラスの相関を示している(p < 0.0001, R-2乗値 = 0.638205, 0.54049)(図表1, 2)。図表から、中国やインドネシアなどの新興アジア諸国の設立コストは高く、新しく簡易的手続きによる企業形態(Auto-Entrepreneur)を導入して起業率を増やしたフランス、書類一枚で設立可能な米国などの先進諸国とは対照的となっている。日本はこれらの中間に位置しており、会社設立はあまり容易とは言えない。中小企業庁白書では今よりも開業率・廃業率が上昇した多産多死型の社会が理想と記述されており、起業率についても一層の増加が望まれる。このOECDのレポートは、起業による機会損失および設立コストと期待ベネフィットとの比較考量が、各国の起業の活性度に重要な因子として関与することを主張しており、データによりそれが裏付けられていることを示している。ひるがえって日本の起業率の低さを考えると、このデータからは日本の会社設立における設立コストの高さがその要因として示唆される。


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図表1: 起業率の国別ランクと手続き数の関係( R^2 = 0.638205 )

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図表2: 起業率の国別ランクと設立までの日数の関係( R^2 = 0.54049 )

OECD Entrepreneurship at a Glance 2012より作成)

企業の生存率は5年で80%と高い

 
 生存率についてはあまり信ぴょう性のあるデータが見つからないが、中小企業庁白書の統計では5年で80%と国際的にも高い水準にある。OECDの統計では5年で50%ほどになるのが一般的となっている。計算方法の違いがあるため一概に比較できないが、日本には長寿企業が多いのも実際である。なお近年ではイノベーションの加速化などから、世界的に廃業率の増加する傾向が見られる。

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図表3: 日本企業の生存率
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図表4: 諸外国の生存率

取締役会の女性比率は36ヵ国中最下位

 一時期話題になった覚えのある話であるが、日本の取締役会における女性比率は約4%とOECD諸国の中でも最低水準にある。女性の就業率が6割を超える中、何らの性差別もないと仮定するとこの数倍程度にはなるはずであり明らかに低い水準と言える。すなわち日本では、故意に女性が出世しにくいのが現状である。就業率や他国との比較からすると適正水準は10―20%程度にはなると思われることから、女性役員数は今よりも数倍程度に増える必要がある。この実現には単なる意識改革だけではなく、抜本的な変革が求められると思われる。具体的には、女性の高学歴化、育児休業制度の実質化、昇進要件からの勤続年数の廃止などが必要と思われる。


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図表5: 取締役会における女性比率の国際比較

OECD Entrepreneurship at a Glance 2012より作成)